それは寒い寒い冬の事。
冬といっても、つい最近まで秋だった。要するに初冬。なのにこんなにも寒い。どう考えても真冬の気温だろう。
そんな中、俺とは歩いていた。
本屋の帰り道。
暖房の利いた暖かい店内から出ると、外の冷たい風が一気に体を冷やして、と俺は身を縮めた。今はもう、外の気温に大分慣れたが、それでも寒いのは変わらない。
風がないのがせめてもの救い、か。
「寒い……」
「まぁ、冬だからね」
俺が言えば、は「そうだね」と苦笑いを浮かべる。
吐く息がどうしようもなく白い。赤くなってきた鼻先は、きっと冷たいんだろう。
は、カーディガンの袖口から少しだけ指先を覗かせた状態――俗に言う萌え袖の手を口へ当てる。可愛いと思った。
こんなに寒いのに、はマフラーも手袋もしていない。……そういう俺も手袋はしてないんだけど。
マフラーは、確か朝忘れたと言っていた。手袋は動きにくくて嫌いだと、いつもつけていない。
そんな事を考えながら歩いてたら、すぐ家の前についてしまった。「また明日ね」と言い残して帰ろうとするを思わず引き止める。 別にいいよね。そうは見えない、ってよく言われるけど一応恋人同士だし。
「あー、えっと……どうですか、うちで一杯お茶でも」
「……いいんですか」
「はい、どうぞ」
「じゃあお言葉に甘えて」
はそう言ってはにかんだ。
そんなに簡単に男の家に上がるなんて、俺狼かもしれないのにね。……いや、別に何もする気ないけど。悠太すぐ帰ってくると思うし。
*
そんな訳で、家。
「今エアコン入れるから」
リモコンのボタンを押して、の隣に座る。当然そんなに直ぐにエアコンが利いてくる筈も無く、はまだ寒そうに身を縮めている。なので、俺の使っていたマフラーを、二人で使う事にした。俺の独断と偏見で、今、そう決めた。
は、目を丸くしていた。
「祐希?」
「部屋暖まるまで、ね」
「……可愛い事するんだね」
そう言って笑う。俺の行動が可愛かったかどうかは知らない。
は冷たい手を俺の手に重ねて、
「寒いから、ね」
さっきの俺の言葉を真似て言う。
手は、思ったよりもずっと冷たい。それとも、俺の手が温かいだけか。
「……冷たいんですけど」
「え、あ、……ごめん」
「なんで?いいよ別に。 ……あっためたげる」
思ったことを口に出したら、は手を引っ込めようとした。だからその手を掴み返して、指を絡める。の手はやっぱり指先までひやりと冷たかったけど、一瞬を見たときに何だか少し嬉しそうに見えたから、部屋が暖まっても暫くこのままでもいいかもしれない。とか、考えちゃったりして。
「……ありがと」
「いーえ」
……まぁでも、結局はくっつきたいだけです、はい。
鈍 行 恋 愛
(ゆっくり進んだっていいでしょう? だって僕達まだ高校生)
*111213
元ネタ→http://shindanmaker.com/170376
見てるこっちがうあー!ってなるくらいゆっくりしたカップル可愛い。
ゆっきーはゆっきーらしく、ゆるく。 マイペースに。