「おい、いつまでそうしてるつもりだ」
「いけませんか?」
もふもふもふもふ。
おそらく、そんなゆるい表現が的確だろう。
ピンク色の羽があしらわれたコート。ドフラミンゴが好んで着ている物だ。
はそれを触っていた。ふわふわとしつつ滑らかな、羽毛の独特の肌触りが気に入ったのだろう。が余りにも夢中で触っているので、ドフラミンゴは声をかけたのだ。
「羽が抜けるだろ」
「そんなこと普段から気にしているんですか?」
クスクス、は笑う。
羽が抜けるのを気にしながら生活するドフラミンゴ。座ったり立ち上がったりする際に、羽を気にしているのを想像したら、何だか可愛らしかった。
「なに笑ってる」
「いいえ、なにも」
「そんなにそれが好きなら新品をやる」
「結構です、それだと意味がないので」
「意味がねえ?」
どういうことだ。ドフラミンゴはそんな表情でを見た。
「なんでもないですよ、気にしないでください」
はそれだけいうとまたコートを触り始めた。
心なしか柔らかい表情をしている気がする。珍しい。
ドフラミンゴは暇で仕方がない。
故に、にちょっかいを出す。といってもこの男、暇でなくともちょっかいを出すのだが。
「遊んで欲しいのなら素直にそういえばいいのに」
「……フフフッ、遊んで欲しいのはお前だろ?」
「何の事ですか? 私は別に仕事に戻ってもいいんですよ」
には仕事が残っていた。こなしてもこなしても追い付かないほど、海軍には絶えず仕事がまいこんでくる。
そう、仕事は腐るほどあるのだ。こうしているうちに次から次へと溜まっていく。
「あァ? なんだ、お前まだ仕事残ってんのか」
「えぇ、何処かの海賊さん達のお陰で」
「フフッ、なら今度会った時にでも言っといてやろう。 もう少し大人しくしろってな」
「ついでに連行してきて貰えると嬉しいんですがね」
「それはお前等海軍の仕事だろ? 俺には関係ねェなァ」
「わかってますよ」
は小さくため息をついて、拗ねる様にドフラミンゴのコートに顔を埋めた。
分かってる。
ドフラミンゴは所詮海賊。例え政府公認であっても、結局は敵なのだ。いつ裏切られるかわからない。
「そういえば、貴方そろそろ何処かへ行くんでしょう?」
「ん……お前、何で知ってる?」
「そんな気がしただけです」
先程からコートに顔を埋めたまま、は尋ねる。
「次は何処に行くんですか? 新世界?」
「フフフッ、企業秘密だ」
「そう……」
この男はいつもこんな風に誤魔化して、に何も教えてはくれない。そのくせ、の事はしつこく聞いてくるから質が悪い。
はようやく顔を上げて、言った。
「やっぱりこのコート下さい」
「そうか。 なら今度新しいのを持ってきてやろう」
「これがいいです」
「……お前も物好きだな。 そんなオンボロの何処がいいんだ」
ドフラミンゴは、理解できないというような目でを見る。最も、その目はサングラスで隠れてしまっていて、からは見えない。
「新品の服の、あの独特の臭いが好きじゃないんです」
「あァ、そういう事か。 それならそうと早く言え。 それはお前にくれてやる」
「……ありがとうございます」
は小さく笑って、羽毛を撫でる。
するとふわりと身体が浮いて、はドフラミンゴの膝の上へ乗せられた。ドフラミンゴの手によって。
が何事かと見上げれば、彼は何やらニヤついてを見下ろしていた。
「何ですか」
「フフッ、何でもねェよ。 ただ……帰る前に抱かせろ」
「何故そうなるのか全く理解できないんですが」
「理解なんぞ出来なくてもいいじゃねェか、快楽さえあればそれで充分だ」
本当にこの男は自分勝手だ。
そんなヤツが好きなんだから、自分はどうかしてるのかもしれない。
頭の片隅でそんな事を考える。
「私は貴方と違って仕事があるんです。 大体、貴方の相手をするのにどれ程体力がいると思ってるんですか。 ふざけないで下さい」
「フッフッフッ、俺は何時でも大真面目だぜェ、。 お前も知ってんだろ?」
ずるい、私が断れないのを知っていて笑っているんだ。
はまた眉根を寄せる。腹が立った。一旦コートを置いて、体制を変え、ドフラミンゴの首に腕を回す。
がぶ、
首筋を思いっきり噛んでも、小さなの噛む力などたかが知れていた。うっすらと歯形がついただけだ。ドフラミンゴは何も言わない、何も反応しない。変わらず、何を考えているのだかわからない笑みを浮かべているだけ。
あぁ、また私は、この男の言いなりだ。
「どうしてそんな、……」
は深いため息をついて、言いかけていた言葉を飲み込んだ。言っても無駄だ。目の前の男はそういう人間なのだから。
「何か言ったか」
「いいえなんでも」
は、これ以上くっつきたくないとでも言うように彼の胸を押していた手の力を、抜いた。
桃色エゴイスト
*120401
ドフラが大嫌いな夢主。好きだけど嫌いです。ツンデレとかじゃなくて本気で嫌いで、でもほんの少し好き。
ドフラはそれを理解した上で楽しんでるイメージ。
目に優しくない配色楽しかったです
◆おまけ
「……一回だけですよ、それ以上したら殺します」
「殺す、ねェ……お前にそれが出来んのか?」
「できます。なめないでください」
「なら今すぐ殺してもらっても構わねェ」
「……それは一回じゃ足りないと受け取っても?」
「結構だ」
「死ね」