皆離れていくの。
好きだと思った人が、急に離れていくの。
それまでどんなに仲良くしていても。

いつだかそれに気がついた。


「何泣いてるんですー?」


上から降ってきたフランの言葉に顔を上げる。


「泣いてないし」


反射的にそう返すものの、濡れた枕は気持ち悪い。


「聞きましたよー彼氏にフラれたらしいですねー」
「フラれてないフッたの」
「そうですかー。 で、フラれた理由は?」
「フラれてないって言ってんだろバカガエル」
「あーわかった、その口の悪さでしょー」
「お前は耳が悪いな」


起き上がるついでに、ベッドの縁腰掛けるカエル頭の背中を蹴ったら、ゲロッと如何にもカエルらしい声を上げて「暴力反対ー」だって。
被るの嫌とか言ってる割には、結構気に入ってるんじゃないかと思う。普通に似合ってるし。


「ティッシュ取って」


目の奥の鈍い痛みに目を細める。きっと私は今、酷い顔をしているんだろう。
あーもー鼻水気持ち悪い。

フランはサイドテーブルに乗っているティッシュを箱ごと寄越した。


「泣くくらいならフラなきゃいいのにー」
「余計なお世話。 鼻水つけんぞ」
「やめてくださいよーイジメですー」


鼻をかんだティッシュをゴミ箱に向かって投げる。ナイスシュート、さすが私。


さんってー、男コロコロ変えますよねー」
「何その言い方、人をビッチみたいに」
「ビッチでしょー、実際。 最高何股ですかー」
「1人に決まってんでしょー」


剥がれかけたネイルを見つめる。
結構気に入ってたのに残念だ。


「絶対嘘ですー20人くらいじゃないんですー?」
「はぁ? 多すぎだろ」


20人も恋人がいたらかなりめんどくさいだろう。想像だけでこんなにも疲れる。

フランはそれっきり黙った。







人間関係なんて磁石と一緒だ。と、思う。

引かれ合う人は最初から決まっている。
そしてたとえ一度引かれ合ったとしても、どちらかの変化でいくらでも反発する。
エネルギーが絶たれたら、それまでどんなにくっついていたって嘘のように離れていく。
そういう事なんだ。


だから、私は自分から人に近づくのを辞めた。


適当に自分の好きな所をふらふらして、相手が来るのをまってればいい。無駄な労力を使わなくて済む。

来るもの拒まず去るもの追わず。それでいいじゃないか。

ただ、近寄ってきた相手にフラれるのは癪だから、相手が冷めてると感じたら自分から別れを告げる。


それの繰り返し。

別れようかと切り出した時の、ほっとしたような残念がっているようなあの顔を思い出した。馬鹿みたい。相手も。自分も。


「ミーが、抜けた人の穴埋めてやってもいいですよー」
「えー何それ、告白ー?」
「そんな感じですー」


あまりにもフランの言い方が冗談っぽかったからこっちも適当に返したのに、そんなことを言われて驚いた。
そうなのか。告白なのか。今のが?
うん、まあ、いいんだけど。


「ねー、クソガエルー」
「何ですかークソビッチー」
「ビッチ好きなの?」
「アンタこそカエル好きなんですー?」


きっとフランもそのうち離れていくの。
けど、それでもいいよ。

世界はそういう風にできているんだから。








(カエル好きだよ、可愛くて)
(ビッチは好きでもなんでもないですけどーさんは好きですよー)








*120429
珍しくタイトルを先に思い付いた。
口の悪い夢主は言い合いさせられて楽しいです(*´ω`*)






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